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神戸地方裁判所 平成2年(ワ)560号 判決

原告

新納成晃

ほか一名

被告

平山清綱

主文

一  被告は、原告新納成晃に対し、金一九一一万六四四三円及びこれに対する昭和六二年一月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告新納成晃のその余の請求及び原告新納幸子の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その三を原告らの負担とし、その余は被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告らの請求

一  被告は、原告新納成晃(以下「原告成晃」という)に対し、四二〇〇万円及びこれに対する昭和六二年一月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え(ただし、一部請求である。)。

二  被告は、原告新納幸子(以下「原告幸子」という)に対し、五五〇万円及びこれに対する昭和六二年一月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、交通事故により傷害を負つた原告成晃とその妻(近親者)原告幸子の損害賠償請求事件である。

一  争いのない事実

1  原告成晃は、昭和六二年一月六日午前六時三〇分頃、神戸市垂水区神田町一番先路上の信号機のない横断歩道上を西方から東方に向かつて横断中、北方から南方に向かつて走行してきた被告運転の普通乗用自動車に衝突されて転倒し、負傷した。

2  原告成晃は、本件交通事故による負傷の結果、神戸徳州会病院で治療を受け、昭和六三年五月一〇日に同病院において症状固定の診断を受けた。

3  被告は、本件交通事故に関し自賠法三条の運行供用者である。

4  原告成晃は、これまでに、本件交通事故に関する損害の填補として、労災保険から九八七万二一五〇円、自賠責保険から八一一万円、任意保険から六六三万九二八七円の合計二四六二万一四三七円を受領している。

二  主たる争点

本件の主たる争点は、原告成晃の後遺障害の内容及び程度と、同原告には既往症があつたため、右後遺障害と本件交通事故との間に相当因果関係があるといえるかどうかという点である。

この点につき、原告らは、原告成晃に残つた後記の言語障害や四肢の障害、頻尿・尿失禁症状等は、本件交通事故に基づくものであり、その程度は自賠法施行令後遺障害別等級表の二級に該当する旨主張し、他方、被告は、原告成晃の右後遺障害は原告ら主張のような重度のものではなく、しかも、その障害は本件交通事故以前から既に存在していた脳梗塞ないし脳萎縮と加齢変化によつて生じたものであつて、本件交通事故とは因果関係がない旨主張する。

第三当裁判所の判断

一  原告成晃の受傷と治療経過

甲第二、第三号証、乙第一号証の一ないし三及び証人橘尚吾の証言によると、原告成晃は、昭和六二年一月六日の本件交通事故の直後、救急車で神戸徳州会病院に運ばれ、橘尚吾医師から外傷性くも膜下出血及び左脛骨腓骨顆部骨折の診断を受け入院したこと、その後、原告成晃は、昭和六二年九月一〇日に退院するまでの間(入院期間二四八日間)、同年一月一〇日には右骨折箇所の手術を受けたほか各種の治療とリハビリを受けたこと、退院後から昭和六三年五月一〇日までの間、さらに同病院に通院して治療等を受け(実日数一七日間)、また、その間の八日間は右手術に係る骨折箇所のボルト抜去のため入院したこと、そして、症状固定とされた同年五月一〇日には、橘医師から、本件交通事故による後遺障害として、四肢の動きの遅延・筋力の低下、左膝関節の機能障害、構音性失語症(発語障害)、頻尿、尿失禁の症状等がある旨診断されたことが認められる。

二  本件交通事故と因果関係のある後遺障害の有無と範囲

1  原告成晃の既往症等

甲第四号証、第一三ないし第一九号証、乙第一号証の一ないし三、第二号証の一ないし四(ただし、乙第二号証の四の三枚目を除く)、前記橘証人及び証人田中宏幸の各証言並びに原告新納幸子本人尋問の結果を総合すると、次の事実が認められる。

(一) 本件交通事故に先立ち、原告成晃は、まず昭和五一年に、左片麻痺の発作により西市民病院において脳梗塞の診断を受け、保存的治療を受けた。

また、昭和五七年には、左下肢静脈症により入院して治療を受けたことがある。

(二) さらに、原告成晃は、昭和五九年三月一〇日の夕食中に、右不全性麻痺と運動性失語の発作を起こし、その三日後にも同様の発作を起こしたほか、同年四月二〇日に右と同様の発作を起こして以降、四肢の麻痺が生じ、意識が傾眠状態となり、運動性失語の状態になつた。

(三) 原告成晃は、同月二五日から神鋼病院に入院し、多発性脳梗塞と診断され、同年五月一七日には左浅側頭動脈と中大脳動脈の吻合手術が、同年六月一九日には右浅側頭動脈と中大脳動脈の吻合手術がそれぞれ行われた。

これらの手術の際の所見によると、脳表では、萎縮が強く(左側がより強い)、シルビウス裂の部分も萎縮のため黒つぽく見え、また動脈が非常に細いため吻合手術のための血管を探すのが困難とされた。

(四) 原告成晃は、同年七月一八日に神鋼病院を退院をするまでの間治療を受けたが、術後の経過は概ね良好であり、退院前後の医師の診療録や看護記録によると、その頃には四肢の筋力が改善して四肢の痺れ感も薄れ、歩行がしつかりできるようになつてきた上、表情も豊かになつてきた旨記載されている。なお、その後の通院の際には医師の前で書字の練習をしたりしたこともあつた。

また、原告成晃は、この入院期間中に排尿困難と残尿感、夜間の頻尿を訴え、前立腺炎との診断により治療を受けている。

(五) 原告成晃は、昭和三四年から株式会社神戸製鋼所に勤務し、昭和五九年当時は総務部株式課に所属していたが、前記のように神鋼病院を退院したのち、しばらくして復職した。

その後の本件交通事故までの間の原告成晃の勤務状況に関しては、欠勤はなく、部下の田中宏幸は、原告成晃の仕事ぶりにつき、筆記に際し休憩をはさむことが多くなつたため筆記速度が落ちたことと、言葉がはつきり聞き取れないということはあつたが聞き返すとはつきり分かつたし、仕事上は特に困ることはなかつたとの印象を持つている。

(六) そして、本件交通事故による神戸徳州会病院入院当初の診療録には、原告成晃のそれまでの普段の症状として、「言葉が少し遅い、歩行など慎重な位で麻痺などない」との記載がされ(乙第一号証の一の一一枚目)、また、「言葉が少し遅い程度、会話はOK・良好、左手やや不自由程度で歩行などには問題がなかつた」との記載がされているが(乙第一号証の二の二枚目)、その約半年後に橘医師が作成した「身体障害者診断書・意見書」と題する書面には「軽度の構音性言語障害は残つていたが日常生活は何とか可能であつた」との記載もある(乙第一号証の一の六二枚目)。

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右事実によると、原告成晃の本件交通事故前の身体状況については、前記のような脳梗塞による手術の予後として、言葉を話すのと筆記する速度が少し遅いくらいで、一応普通に仕事をし生活をすることができていたものと認めるのが相当である(なお、本件全証拠を検討してみても、本件交通事故の少し前ころにおいて原告が右既往症の関係で病院で何らかの治療を受けていたことを窺わせるような証拠は見当たらない。)。

2  現在の原告成晃の症状

次に、現在の原告成晃の症状についてみるに、甲第二、第三、第二一、第二四号証、乙第一号証の一ないし三、第三、四号証、前記橘証人及び田中証人の各証言並びに原告新納幸子本人尋問の結果を総合すると、前記一のような症状固定後、原告成晃は、その後の懸命のリハビリにもかかわらず、依然、四肢の動きが全体に遅く、歩行が困難で、日常の起居等の動作につき常に原告幸子の介助を要する状態にあり、言語については、他人の話を聞き文字等を正常に理解することはできるものの、言葉を話すのが相当困難で、単語をぽつぽつと区切つて話す程度で会話に時間がかかること、そのほか、食事の際などに喉がむせることが多く、また、排尿の回数が多く尿失禁があり、精神的にも安定を欠くことが多いことが認められる。

3  本件交通事故と原告成晃の後遺障害との因果関係

(一) そして、前記2のような原告成晃の症状のうち、言語障害と歩行障害、四肢の動きの遅延といつた症状について、前記1で認定した本件交通事故前の同原告の症状と対比して考えてみると、言葉を話す面での障害(発語障害)が引き続き存在するという共通点がみられるものの、その程度は相当悪化している上、軽度の咽頭麻痺もみられ、また、歩行障害や四肢の動きの遅延といつた症状は本件交通事故後に特に顕著に生じたものといわざるを得ない。

加えて、前記橘証言によると、本件交通事故の結果、原告成晃の脳にはくも膜下出血が生ずるほどの外部的な強い衝撃が加わつており、現在の原告成晃の右の症状は、脳に加わつた衝撃が既に存在していた脳萎縮ないし脳梗塞に悪影響を与え、これによる脳機能の低下に基づいて生じたものと推認することができるのであつて、以上によれば、現在の原告成晃の右の症状は、本件交通事故と相当因果関係のある後遺障害と認めるのが相当である。

前記橘証言によると、CT検査の所見上、本件交通事故直後からその後にかけては原告成晃の脳萎縮の進行程度自体にはさしたるものがないというのであり、また、前記のとおり本件交通事故前の原告成晃の身体状況には脳萎縮の進行に伴うような症状増悪の様子がみられなかつたことからすると、被告主張のように、右の症状が本件交通事故とは関係がなく、本件交通事故前から既に存在していた脳萎縮ないし脳梗塞の進行と加齢変化だけによつて生じたものとは直ちには考えがたい。

(なお、原告ら主張の後遺障害のうち、頻尿・尿失禁症状については、前記1の(四)で認定したとおり、既に神鋼病院に入院していた頃から夜間の瀕尿がみられ、前立腺炎との診断を受けていたことに照らすと、本件交通事故との相当因果関係を直ちに肯定することはできず、本件全証拠を検討してみても、これを認めるに足りる証拠は存しない。)

(二) しかしながら、他方、これまでに認定、説示したとおり、原告成晃の前記後遺障害には、本件交通事故前から既に存在していた脳萎縮ないし脳梗塞が少なからず寄与していることは明らかであり、前記1でみたような既往症の内容と部位、程度、神鋼病院における手術当時の脳の状況、さらに本件交通事故前後における治原告成晃の症状等諸般の事情を総合勘案すると、本件交通事故の後遺障害に対する寄与の割合は、七割と認めるのが相当である。

この点につき、被告は、原告成晃の前記既往症は自賠法施行令後遺障害別等級表の九級一〇号相当の障害であつたと主張し、本件交通事故に関する後遺障害事前認定の調査書(乙第三号証)にはこれに沿う記載があり、また、労災保険上はそのような取り扱いがされているのであるが(乙第四号証)、これらは、本件交通事故前の原告成晃の症状を直接検査診断した結果に基づいてのものとはいえない上、前記1で認定した原告成晃の本件交通事故前の症状からすると、右九級相当の障害が具体的に存在したものと認めるのは困難であり、さりとて原告ら主張のようにこれらを全く無視するのは相当でないから、結局、本件においては、前記のように、これら既往症等を原告成晃の身体的な素因とみてその寄与の割合を検討するのが妥当というべきである。

ただし、原告成晃の被つた損害のうち症状固定時までの治療費、入通院関係費用及び休業損害、受傷による入通院慰謝料については、前記寄与率に従つてこれらをも減額するとすれば、前記外傷性くも膜下出血や左脛骨腓骨顆部骨折等の治療のために生じた積極ないし消極の損害を減額する結果となつて相当でないから、衡平上、これらについては減額をしない。

三  原告成晃の損害

そこで、本件交通事故によつて原告成晃が被つた損害を検討する。

1  治療費及び診断書料 一万二〇〇〇円

原告らは、治療費及び診断書料として合計四万五〇〇円の損害を主張するが、その具体的な内訳を個別に立証しない。もつとも、乙第七号証及び第一号証の一、二(診療録)中の診療報酬明細書の各記載によると、症状固定時までの期間の診断書料及び明細書料として合計一万二〇〇〇円の支出を要したことを認めることができ、これを超える部分については立証がないことに帰着する。

2  入通院付添費用、入院雑費及び通院交通費 合計一八一万四四〇〇円

(入通院付添費用) (一四六万一五四〇円)

原告らは、神戸徳州会病院の入通院期間につき、原告幸子が付き添つた費用として、入院期間合計二五六日のうち、原告幸子だけが付き添つた二三三日分について一日当たり五五〇〇円の割合で合計一二八万一五〇〇円を、職業付添人とともに付き添つた二三日分について一日当たり三〇〇〇円の割合で合計六万九〇〇〇円を、また通院に付き添つた一七日分について一日当たり三〇〇〇円の割合で合計五万一〇〇〇円をそれぞれ要した旨主張し、さらに職業付添人が付き添つた右二三日分の費用として合計二三万一〇四〇円を主張する。

そこで検討するに、まず、甲第六、第二四号証及び原告新納幸子本人尋問の結果によると、原告幸子は原告成晃が神戸徳州会病院に入院していた全期間にわたつて付き添い、退院後もタクシーに乗車して原告成晃とともに通院していたことが認められる。そして、前記認定の本件交通事故による原告成晃の受傷状況や治療経過、原告成晃の症状、介助の必要性等を勘案すると、原告幸子の入院付添費用としては、単独付添のときは一日当たり五〇〇〇円の割合で(二三三日分で合計一一六万五〇〇〇円)、職業付添人との共同付添のときは一日当たり一〇〇〇円の割合で(二三日分で合計二万三〇〇〇円)認めるのが相当であり、通院付添費用としては、一日当たり二五〇〇円の割合で(一七日分で合計四万二五〇〇円)認めるのが相当である。

また、職業付添人に要した費用については、乙第五号証の一ないし三及び第六号証によると、実費として合計二三万一〇四〇円を要したことが認められる。

したがつて、原告ら主張の前記費用のうち右各限度を超える部分については、本件交通事故と相当因果関係のある費用とは認められない。

(入院雑費) (三三万二八〇〇円)

入院雑費については、一日当たり一三〇〇円の割合で認めるのが相当であり、二五六日分として合計三三万二八〇〇円となる。

(通院交通費) (二万六〇円)

原告成晃の症状からすると、タクシーでの通院はやむを得ないものというべきであり、甲第六号証によると、これに要する当時のタクシー料金は往復で通常一一八〇円と認められるから、前記一七日分の通院交通費は合計二万六〇円となる。

3  休業損害等 合計八四五万七〇七三円

甲第五、第二三号証及び弁論の全趣旨によると、原告成晃は、本件交通事故による入通院のため勤務先の神戸製鋼所から欠勤扱いとされ、昭和六二年九月三〇日をもつて同社を退職したこと、原告成晃の昭和六一年度の年収は六九二万九六五三円(月額平均五七万七四七一円)であつたことが認められる。

そして、甲第五号証によると、昭和六二年冬期の賞与においては、三九万一七二九円を減額されたことが認められる。

また、本件交通事故から右退職時までの間の休業損害としては、右月額収入にその期間の八か月と二五日分を乗じて計算すると(一か月三〇日の日割計算)、五一〇万九九三円となる。さらに、右退職の翌日から症状固定と診断された昭和六三年五月一〇日までの間の休業損害としては、原告ら主張のとおり右月額収入が退職に伴い三割減少したものと認めて、これにその期間の七か月と一〇日分を乗じて計算すると(前同様の日割計算)、二九六万四三五一円となる。

4  後遺障害による逸失利益 一六九五万四四〇七円

前記認定の原告成晃の後遺障害の内容と程度、介助の必要性やこれまでの治療経過、さらに前記後遺障害事前認定の調査書(乙第三号証)では原告成晃の後遺障害につき五級に該当する旨記載され、労災保険上は四級に該当するとされていること(乙第四号証)などの事情をも考慮すると、現在の原告成晃の発語障害及び歩行障害、四肢の動きの遅延には多大のものがあるといわなければならず、言語障害の存在と神経系統等の障害により特に軽易な労務以外の労務に服することが困難な状態にあると認められることからすると、これらによる労働能力喪失の割合は、八五パーセントと認めるのが相当である。

そして、原告成晃は症状固定時には六〇歳であり、六七歳までの七年間にわたつて右労働能力喪失が続くとみるのが相当であるから、前記3のように三割減額した年収に、七年に対応する新ホフマン係数五・八七四三を乗じて中間利息を控除し、さらに前記二の3のとおり本件交通事故の寄与率を七割として計算すると、次の算式により、逸失利益は一六九五万四四〇七円となる。

(692万9653(円)×0.7×0.85×5.8743×0.7)

5  慰謝料 合計一四七〇万円

前記認定の受傷状況や入通院期間、治療経過等を勘案すると、受傷による入通院慰謝料としては二八〇万円が相当である。

また、後遺障害による慰謝料については、後遺障害の内容と程度、日常生活における支障と原告幸子の献身的な介助に頼らざるを得ない事情を考慮し、さらに原告幸子との平穏な家庭生活が損なわれるに至つたことなども十分にしん酌すると、一七〇〇万円をもつて相当と認めるが、これに前記寄与率を七割として計算すると一一九〇万円となる。

6  損益相殺

以上の損害額を合計すると四一九三万七八八〇円となるところ、これまでに原告成晃が損害の填補として合計二四六二万一四三七円を受領していることは当事者間に争いがないからこれを控除すると、合計一七三一万六四四三円となる。

7  弁護士費用

本件事案の内容、訴訟の経過、認容額等を勘案すると、原告成晃が本件交通事故と相当因果関係のある損害として被告に賠償を求め得る弁護士費用は、一八〇万円が相当である。

四  原告幸子の請求

次に、原告幸子は、本件交通事故の結果、原告成晃に対する日常的な介助のために、原告幸子自身精神的肉体的に疲労困憊し多大の精神的苦痛を被つたとして慰謝料を請求するところ、たしかに同原告が背負わねばならない介助の苦労には多大のものがあると思われる。しかしながら、前記認定のような原告成晃の後遺障害の内容と程度等にかんがみると、原告幸子に固有の慰謝料請求を認めるまでにはなお至らないというべきであり、原告成晃の後遺障害によつて原告らの平穏な家庭生活が色々と損なわれたとする点については、前記三の5のとおり原告成晃の慰謝料の算定に当たつてこれをしん酌するのが相当である。したがつて、原告幸子の請求は理由がない。

五  結び

そうすると、原告成晃の請求は、金一九一一万六四四三円及びこれに対する不法行為の日である昭和六二年一月六日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当として棄却し、原告幸子の請求は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担については民事訴訟法八九条、九二条、九三条を適用し、仮執行宣言については同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 安浪亮介)

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